中国人選手が「ミサイル型ぬいぐるみ」騒動でISUが調査へ フィギュア界に波紋広がる
※本ページはプロモーションが含まれています※
—
2025年10月29日、国際スケート連盟(ISU)は、中国・重慶で開催されたフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ「中国杯」において、中国人ペア選手が“ミサイル型ぬいぐるみ”を所持していた問題について正式に調査を開始したと発表した。
この出来事は、単なる「ぬいぐるみ事件」として片づけるにはあまりにも象徴的で、スポーツと政治、そしてSNS世論の関係性を改めて浮き彫りにした。以下では、この問題の概要と国際的な反応、そして筆者の独自分析を交えて掘り下げていく。
■ 問題の発端:中国杯で“ミサイル型おもちゃ”を掲げたペア
事件の舞台は10月25日、中国・重慶。フィギュアスケートGPシリーズの一環として開催された「中国杯」において、中国のアイスダンスペア、レン・ジュンフェイ選手とシン・ジャニン選手が、演技後の得点待ちの際に“ミサイル型のぬいぐるみ”を手にしていたことが映像で確認された。
そのぬいぐるみには「DF-61」と書かれており、中国の新型大陸間弾道ミサイル「東風61(Dongfeng-61)」を模したデザインだった。東風シリーズといえば、中国軍が誇る核搭載可能な長距離弾道ミサイルであり、国家的象徴でもある。
つまり、選手たちが掲げたのは、単なる玩具ではなく「軍事的メッセージ」を想起させるアイテムだったのである。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大会名 | フィギュアスケートGPシリーズ 中国杯 |
| 開催地 | 中国・重慶 |
| 該当選手 | レン・ジュンフェイ&シン・ジャニン組 |
| 問題となった物 | ミサイル型ぬいぐるみ(DF-61表記) |
| ISUの対応 | 不適切なアイテムとして調査開始 |
■ ISUの声明:「遺憾」で済まされない国際問題の火種
ISUは声明で、「演技後に観客が投げ入れたぬいぐるみの中に不適切なものが含まれていた可能性があることを認識している」と発表。さらに、「スケーターがそれを手にしたことを遺憾に思い、調査を進める」と述べた。
ここで重要なのは、「観客が投げ入れた」という表現だ。つまり、選手が意図的に持ち込んだのか、あるいは観客からのプレゼントだったのかという点が焦点になる。
しかし、レン選手がその“ミサイルぬいぐるみ”を一時的に掲げて見せた映像がSNS上で拡散し、「国家プロパガンダではないか」「フィギュアの舞台で軍事的象徴を掲げるとは」と非難が殺到。事態は一気に国際的な炎上へと発展した。
■ 背景にある“スポーツと政治”の微妙な関係
中国のスポーツ選手が、国家的シンボルや軍事的要素を象徴するアイテムを公の場で扱うことは、決して珍しくない。国威発揚(ナショナル・プライド)を示す行為として評価される場合もあるが、国際大会という「中立の舞台」では極めてデリケートな問題になる。
たとえば、過去にはロシアの選手がウクライナ侵攻後に軍を称賛するような投稿を行い、国際的非難を浴びた例もある。スポーツは政治と切り離されるべきという原則がありながらも、現実には“国の顔”として扱われる選手たちが政治的象徴と切っても切れない関係にある。
今回の件も、その境界線の曖昧さを突きつけた形だ。
■ SNSの反応:「無邪気な行為」か「国家の演出」か
中国国内のSNS「Weibo」では、「ただのぬいぐるみじゃないか」「西側が過剰反応している」といった擁護的な声が目立つ一方、海外では「ミサイルを模したおもちゃを掲げるなんて信じられない」「平和の祭典で兵器の象徴を出すのは不適切」といった批判が相次いだ。
特に、国際的には「フィギュア=平和・芸術・スポーツの融合」とされる競技であり、その舞台に“核兵器を想起させる物体”が登場したことにショックを受けた人も多い。
筆者としては、もし本当に「観客から投げ込まれたもの」だったとしても、選手がそれを掲げた瞬間に“意図”が生まれてしまう点に注意が必要だと考える。国際舞台では、「無自覚なジェスチャー」が外交的意味を帯びてしまうのだ。
■ 今後の影響:ISUの判断と中国連盟の対応に注目
ISUの調査結果次第では、レン&シン組に対して警告や制裁が科される可能性もある。過去には、選手の政治的行為や不適切なパフォーマンスに対して減点・出場停止処分が下されたケースも存在する。
一方で、中国スケート連盟は現時点でコメントを出しておらず、国内報道でも大きくは取り上げられていない。中国当局としても「軍事関連表現への批判」が国際世論にどう影響するかを慎重に見極めているようだ。
今後、ISUがどのような対応を取るのかによって、スポーツ界全体の「表現の自由」と「政治的中立性」のバランスが改めて問われることになるだろう。
■ 独自意見:「スポーツの中立」を守る覚悟が問われている
今回の件を見て筆者が強く感じたのは、「国際大会の意義」が再び揺らぎ始めているということだ。フィギュアスケートは本来、音楽と演技で観客を魅了する芸術的競技であり、政治や軍事とは最も遠い存在であるはずだった。
しかし、SNS時代においては、どんな一瞬の行為も切り取られ、拡散され、政治的意味を持たされる。選手たちは無意識でも「象徴の担い手」として見られてしまうのだ。
スポーツ界が真の国際性を維持するためには、各国連盟が自国の政治的メッセージを競技に持ち込まないよう教育・管理を徹底すること。そして観客側にも「フィールドは政治の舞台ではない」という理解が求められる。
レン選手の笑顔の裏で揺れる国際感情――。この小さな“ぬいぐるみ事件”は、平和の象徴であるフィギュアスケートが抱える現代的ジレンマを、私たちに静かに突きつけている。
▶関連記事:CNN報道「中国ペア、ミサイル型ぬいぐるみで調査」
▶関連リンク:国際スケート連盟(ISU)公式サイト
