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指定暴力団「六代目山口組」の若頭補佐であり、直系二次団体「秋良連合会」の会長を務める金東力(キム・ドンリョク)容疑者(70)が、暴力団員ではない実弟に成り済ましてオンラインで競輪車券を購入したとして、大阪府警捜査4課に逮捕されていたことが明らかになった。逮捕は2026年7月30日付で、私電磁的記録不正作出・同供用の疑いが持たれている。
逮捕の概要──弟や知人ら計3人が逮捕
大阪府警が発表したところによると、金東力容疑者を含む男3人が逮捕された。金容疑者に加え、実弟である金裕司(キム・ユウジ)容疑者(64)=住所不定、無職、ならびにもう1名の男が、私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で逮捕されている。府警は3人の認否を明らかにしていない。
逮捕容疑の核心は、2025年(令和7年)11月から12月にかけて、金東力容疑者が暴力団排除条項によって利用を禁じられている公営競技のインターネット投票サービスにおいて、暴力団員ではない実弟・裕司容疑者の名義を不正に使用し、合計243回にわたって約392万円分の競輪車券を購入したことにある。各回の購入のたびに、運営事業者のサーバー上に「購入者は暴力団関係者ではない」という虚偽の情報を記録させた疑いが持たれている。
「暴力団排除条項」とは何か──公営ギャンブルと反社会的勢力
競輪・競馬・競艇・オートレースのいわゆる公営競技4種は、全国の自治体が主催する公営ギャンブルであり、そのインターネット投票サイト(IPATやKドリームスなど)の利用規約には暴力団排除条項が明記されている。具体的には、利用申込時に「自己または同居親族が暴力団員ではないこと」の確認を求め、虚偽申告が発覚した場合にはアカウント停止や法的措置の対象となる。
この条項の背景には、2011年に全都道府県で施行された暴力団排除条例の存在がある。同条例は、事業者に対し、契約締結時に相手方が暴力団関係者でないことを確認する努力義務を課しており、公営競技の投票サービス事業者もこれに従って規約を整備してきた。金容疑者らが「暴力団関係者ではない」と虚偽の申告をして利用規約に同意した行為は、こうした行政・社会の取り組みを正面から潜脱するものであった。
発覚の経緯──「会長は競輪が好き」のひと言から
事件が発覚したきっかけは、2023年2月に遡る別件捜査であった。大阪府警が別の事件で金東力容疑者の所持品を調べた際、スマートフォンのケースの中から、インターネット投票サービス運営会社が発行した弟・裕司容疑者名義の会員証が見つかった。さらに、当時の捜査対象者から「会長は競輪が好き」という供述が得られたことで、金容疑者が組織の幹部でありながら長期間にわたって違法にオンライン車券購入を行っていた実態が浮上した。
府警が銀行口座の取引履歴などを詳しく調べた結果、金容疑者は2021年ごろから約5年間にわたり、総額1億円以上を競輪に賭けていたとみられている。これは1回あたりの平均購入額に換算しても極めて高額であり、組織の資金源としての側面も疑われることから、府警は資金の流れについても慎重に捜査を進めている。
金東力容疑者とは──山口組執行部の一角
金東力容疑者(70)は、六代目山口組の若頭補佐という要職にあり、山口組執行部の一員である。若頭補佐は、組のナンバー2にあたる若頭を補佐し、複数名いる執行部の中でも特に中枢に近い立場だ。金容疑者は同時に、大阪市に本部を置く山口組の直系二次団体「秋良連合会」の会長も務めており、長年にわたって関西圏の暴力団勢力図において重要なポジションを占めてきた。
特定抗争指定暴力団である六代目山口組は、警察庁によって全国の公安委員会が特に警戒を要する団体として指定されており、構成員の動向は常に捜査当局の監視下にある。今回の逮捕は、そうした厳しい監視網の中でも、執行部幹部が巧妙に「堅気(かたぎ)」の弟の身分を利用して不正に公営競技へアクセスしていた実態を明るみに出した格好だ。
「私電磁的記録不正作出・同供用」罪の重み
金容疑者らに適用された「私電磁的記録不正作出・同供用」は、刑法第161条の2に規定される罪である。これは、人の事務処理を誤らせる目的で、権利・義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作成し、または不正に作成された電磁的記録を人の事務処理に使用した場合に成立する。法定刑は5年以下の懲役または50万円以下の罰金である。
今回のケースでは、インターネット投票サイトのサーバー上に「購入者は暴力団員ではない」という虚偽の利用者情報を243回にわたって記録させた点が、「不正作出」に該当する。さらに、その不正記録に基づいて実際に車券購入という事務処理を実行させた点が「同供用」にあたるとみられる。1回ごとに罪が成立しうるため、起訴されれば相当の量刑が科される可能性がある。
今後の捜査の焦点──組織的関与と資金洗浄の疑い
大阪府警は今回の逮捕を足がかりに、他にも事件に関与した人物がいるとみて捜査を拡大している。特に注目されるのは以下の3点である。
- 賭け金総額1億円の資金源──個人の娯楽の範囲を超えた巨額の賭け金がどこから出ていたのか。組織の資金が流用されていた可能性も視野に、資金洗浄(マネーロンダリング)の観点からも捜査が進められている。
- アカウント管理の実態──弟名義のアカウントを用いた車券購入が、金容疑者個人の行為にとどまるのか、秋良連合会あるいは山口組として組織的に関与していたのか。
- 他の公営競技への不正アクセス──競輪だけでなく、競馬や競艇など他の公営競技の投票サイトについても同様の手口が使われていた可能性があり、府警は各事業者と連携して取引履歴の精査を進めている。
暴力団排除の取り組みに突きつけられた課題
今回の事件は、暴力団排除条項の実効性に一石を投じるものとなった。オンライン投票サイトでは、本人確認書類の提出など一定の本人確認(KYC)が行われているが、金容疑者は「実弟」という血縁関係にある非暴力団員の身分証明書を用いることで、このチェックをすり抜けたとみられる。
有識者からは「家族名義を使った”名義貸し”は、これまでも暴力団の資金獲得手段として警戒されてきたが、オンライン化によってより容易かつ広範に行われるリスクが高まっている」との指摘が出ている。公営競技の投票サイト運営事業者には、より厳格な本人認証の導入や、不自然な購入パターンを検知するAI監視システムの強化などが求められることになりそうだ。
まとめ──頂点に近い幹部の逮捕が意味するもの
指定暴力団・六代目山口組の若頭補佐という、組織の頂点に極めて近い幹部が、公営競技の不正利用という形で刑事事件の被疑者となった事実は、暴力団排除の取り組みが新たな段階に入ったことを示している。約1億円にも上る賭け金が組織の活動資金とどのように結びついていたのか、今後明らかになるであろう捜査の進展に、社会の注目が集まっている。


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