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愛媛県今治市の中心部、今治駅から歩いて8分ほどの場所に鎮座するのが別宮大山祇神社です。地元では親しみを込めて「別宮さん」と呼ばれ、初詣や七五三、厄除けなどで長く信仰を集めてきました。しまなみ海道の大三島に鎮座する伊予国一宮・大山祇神社の「地御前(ちごぜん)」として創建された由緒ある神社で、市街地にありながら深い緑と静けさに包まれています。

和銅5年創建、大山祇神社の「地御前」として
社伝によると、別宮大山祇神社の創建は和銅5年(712年)。当時この地を治めていた越智玉澄(おちのたますみ)公が、大三島の大山祇神社を「地御前」としてこの地に勧請したことに始まると伝えられています。『豫陽盛衰記』には、神殿をはじめとする建造物が本社に劣らぬ壮観さであったと記されており、往時の隆盛がしのばれます。
ご祭神は大山積大神(おおやまつみのおおかみ)。相殿には上津姫(かみつひめ)、下津姫(しもつひめ)が祀られています。山の神であると同時に、瀬戸内の海を行き交う人々からは海上安全の神としても厚く信仰されてきました。現在も家内安全、除災招福、交通安全、海上安全、そして各産業の繁栄など、幅広いご神徳で知られています。

見どころ① 戦火をくぐり抜けた県指定有形文化財の拝殿
この神社最大の見どころが拝殿です。天正3年(1575年)、来島城主・村上(来島)通総によって再建されたもので、棟札が残されています。桁行5間・梁間4間の一重切妻造・檜皮葺という構造で、この地方では唯一の純和様神社建築として愛媛県指定有形文化財になっています。
興味深いのは、この拝殿がたどってきた数奇な歴史です。昭和12年(1937年)の新社殿造営にともなって一度は移築され、絵馬殿として使われていました。ところが昭和20年(1945年)の今治空襲で新社殿が焼失。皮肉にも、脇に移されていた旧拝殿だけが焼け残ったのです。戦後、この拝殿を元の位置に戻して再び拝殿として用いることとなり、昭和37年(1962年)に解体修理復元工事が行われて現在に至ります。450年近い時を越えて残された建築の前に立つと、静かな重みが伝わってきます。
見どころ② 大楠と「お狸さん」の民話
境内で目を引くのが大きな楠(くすのき)。樹齢350年以上と推定され、そのうち一本は今治市の天然記念物に指定されています。そしてこの楠には、今治に伝わるユニークな民話が結びついています。
楠にはそれぞれ「お袖大明神」「お佐遠(おさお)大明神」「お奈遠(おなお)大明神」が祀られています。これは、いたずら好きだったところを隣の南光坊の天野快道和尚に諭されたという、三姉妹の狸のお話。「別宮の狸さん」として地元で語り継がれてきました。参拝の際は、ぜひこの三体の祠も探してみてください。なお、お袖大明神が祀られる楠以外の2本は戦災で焼失し、戦後に植え直されたものだそうです。
見どころ③ 個性豊かな境内社めぐり
境内には清髙稲荷神社、阿奈婆(あなば)神社、荒神社、奈良原神社といった境内社が並び、それぞれ立派な社殿を構えています。
なかでも阿奈婆神社は、大三島の大山祇神社の境外摂社・阿奈波神社から勧請されたもので、大山積大神の長女とされる磐長姫(いわながひめ)を祀ります。長寿の神として、また婦人科系の病に霊験があるとして信仰を集めてきました。奈良原神社は、旧越智郡玉川町(現・今治市)の楢原山頂に鎮座していた奈良原神社の御分霊。牛馬安全守護の神として広く信仰され、山頂の経塚出土品は国宝に指定されています。氏子住民が今治市街へ移住したことにともない、この地に分霊が迎えられました。
四国八十八ヶ所「旧55番札所」というもうひとつの顔
別宮大山祇神社を語るうえで外せないのが、四国遍路との深い関わりです。もともと四国八十八ヶ所の55番札所は、大三島の大山祇神社でした。しかし島への参拝は当時きわめて不便だったため、地御前である当社が「前札所」とされ、江戸時代には事実上の札所として機能していました。55番の御詠歌に「別宮」が詠み込まれているのはそのためです。
納経を司っていたのが、正治年間(1199〜1201年)に大山祇神社の法楽所24坊のうち8坊が移されて成立した供僧坊のひとつ、南光坊でした。明治の神仏分離によって南光坊が独立し、現在は南光坊が正式な55番札所となっています。両者は今も道路を挟んで隣り合っており、古くから「両所参り」が習わしとされてきました。弘法大師や、正応2年(1289年)には一遍上人も当社に参詣したと伝えられます。お遍路の途中で立ち寄る方も多い場所です。
御朱印について
御朱印は社務所でいただけます。神職が常駐されている神社です。通常の御朱印には「日本総鎮守」「別宮」「大山祇神社」「三島地御前」と揮毫され、折敷に三文字(おしきにさんもじ)の神紋の朱印が押されるのが特徴。また、当社は四国曼荼羅霊場40番の札所でもあり、そちらの御朱印もいただけます。大鳥居に掲げられた「日本総鎮守 三島地御前」の扁額とあわせて、この神社の格式を感じられるポイントです。
※対応時間や授与状況は変わることがあります。確実にいただきたい場合は事前に神社へお問い合わせください。
主な年間行事
| 時期 | 祭事 |
|---|---|
| 1月1日〜3日 | 歳旦祭・初詣 |
| 2月17日 | 祈年祭 |
| 旧2月初午日 | 初午祭 |
| 5月第2土曜日 | 例大祭 |
| 7月29日 | 輪越(夏越)祭 |
| 11月23日 | 新嘗祭 |
| 12月31日 | 除夜祭 |
とくに5月第2土曜日の例大祭は、今治の伝統芸能である「継ぎ獅子」が奉納されることもあり、多くの人でにぎわいます。7月末の輪越祭(茅の輪くぐり)も、夏の風物詩として親しまれています。
アクセス・基本情報
| 名称 | 別宮大山祇神社(べっくおおやまづみじんじゃ) |
|---|---|
| ご祭神 | 大山積大神(相殿:上津姫・下津姫) |
| 鎮座地 | 愛媛県今治市別宮町3丁目6番1号 |
| 電話番号 | 0898-22-5304 |
| 創建 | 和銅5年(712年) |
| 社格等 | 旧県社 |
| 文化財 | 拝殿(愛媛県指定有形文化財) |
| 巡拝 | 四国曼荼羅霊場40番/四国八十八ヶ所旧55番札所 |
| アクセス | JR予讃線「今治駅」より徒歩約8分(約560m) |
| 駐車場 | あり(8台・南光坊駐車場の向かい) |
| 拝観料 | 無料 |
まとめ|今治観光にあわせて立ち寄りたい古社
別宮大山祇神社は、今治駅から徒歩圏内という抜群のアクセスながら、1300年以上の歴史と県指定文化財の拝殿を持つ本格的な古社です。隣接する南光坊とあわせて参拝すれば、神仏習合の名残と四国遍路の歴史を同時に感じることができます。今治城やしまなみ海道、大三島の大山祇神社本社への旅とあわせて、ぜひ足を運んでみてください。境内の大楠を見上げながら、狸の三姉妹の民話に思いを馳せる時間も、この神社ならではの楽しみ方です。




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